『ジグソーパズル』

今日は子供達二人が、ジグソーパズルに取り組んでいた。

300ピースの犬の柄のものである。

とある映画のグッズにパズルがあったのをきっかけに、

二人してこのような遊びが好きになったようだ。

妻は日中出かけていたが、

家にいた私はただ見ているだけで、何のアドバイスもしなかった。

自力で解決する力を付けてほしいからである。

結局、今日一日では組み上がらなかったが、

最後まで粘り強くやってほしいと思う。



『ジグソーパズル』

「何悩んでるのさ」
「見たら大体分かるだろ」
 休日。コンビニに少し用事があったので、そこで野暮用をこなして家に帰ると、テーブルの上が散らかっていた。そう、ジグソーパズルのピースで。その前に、うんうんと唸る、ルームシェアをする相方。
「そんな趣味があるんだね」
「ガキん頃よくやってたんだよ。この間、たまたま雑貨屋に行ったら、目に入ってやりたくなっちまってな。あ、コーヒー淹れてくれ」
「はいはい」
 見本を見ると、イルカを中心にした、海の生き物の1000ピースものパズルらしい。外枠は組み上がっていて、内側に攻め込もうとしているところらしい。
 コンビニから持ち帰った品を自室に置いて、キッチンに立つ。しかし今日は暑い、アイスの方がいいだろうか。
「ねえ、コーヒーは冷たいのでいい?」
「そうしてくれ」
 集中を切らしたくないらしい、こちらを向かずにあいつは答えた。僕も飲みたい気分だ、お湯を沸かしている間に、ドリップパックをセットする。ただし、一つのコップにだけ。彼は薄いのを好むから、二人で飲むときはドリップの二杯目を彼にあげている。
 沸騰したら、とあるコーヒーチェーンのオリジナルブレンドのそれに、まず僕の分の一杯目。それがカップ一杯分になったら、もう一つのコーヒーカップにパックを付け替え、二杯目を淹れる。そこに氷を一つ、二つ、三つ、四つずつ。
「はい」
「ん、置いとけ」
 僕の方には目もくれずに。邪魔にならないところにそれを置くと同時に、持っていたピースを一つ、綺麗にはめ込んだ。
「手伝おうか?」
「ガキじゃあるまいし」
「失礼。冗談だよ」
 彼はプライドが高い。そんな言葉をかけるべきではなかったか。
「隣、いい?」
「邪魔しないならな」
「本を読もうかと」
「それならいい」
 汗をかき始めたカップを、彼のそれを置いた反対側に置いて、僕は自室に本を取りに行く。最近はまっている、ミステリー小説のシリーズだ。
――ぱふん。
 リビングに戻れば、ピースがはまる、小気味いい音。それからコーヒーを一口飲み、また別のはめられそうなピースを探す。
 僕はその左横に座り、本の続きを広げた。

「……タイムリミット」
「ん?」
 集中しきっていて、完全に黙っていた相方が、急に声を上げたのに驚いて、自分も思わず顔を彼の方に向けた。パズルはあれからやや進んだようだったが、ピースはまだかなり残っている。
「時間切れだ。もう晩飯の支度の準備の時間だ」
 壁に掛けている、柴犬の後ろ姿の形をした、尻尾が揺れる時計を見てみると、もう五時だった。しかし。
「もう少しやっててもいいよ? それから外食でも構わないんだし」
「いや、疲れたし、集中が切れたからもういい。外に出てリフレッシュしたいしな。シンちゃん、今日はナポリタンが食いてえな」
「分かったよ。じゃあ、一緒に買いに行こうか」
「おう、片付けるから待っててな」
「ゆっくりでいいよ」
 組みかけのそれを額の中に閉じ込め、まだバラバラのピース達は箱の中にそのまま仕舞われる。鼻歌を歌いながら、それらを部屋に持ち帰る。どうやら気分がいいらしい。
――そういうところ。
 同性同士でも、ちょっと可愛いなとは、思ってしまうのだ。


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